明治の始め頃、三十間堀から一体のお地蔵様が掘り出されました。
これを銀座の空き地に安置すると、信仰深い人々がお団子や花などを供え、参拝するようになりました。
やがてこの地蔵が出世や開運、商売繁盛などに御利益があると言われ、賑わいだします。
お堂も少し立派にもなり、人が多くなると縁日まで開かれるようになったのです。
その縁日の賑わいは大変なもので、書物などにも描かれているほどです。
銀座を代表する風俗として、多くの人々に人気でした。
しかし、関東大震災、第二次世界大戦の際に、お地蔵様は二度ほど行方不明になってしまいます。
それでもその度に見つけ出され、今度はどこにも行かないようにと、三越の屋上に祀られたのです。
震災などで傷がつきましたが、今でもその姿は屋上に見られます。
掘の中に埋もれていたのが、今では三越の屋上にまで上ってきて、それも一つの出世でしょうか。
このお地蔵様については不明な点が多いのですが、その姿には威厳も感じられ、ふくよかなその顔は、我々に福を運んできてくれそうです。
銀座の街や人波に疲れたら、三越の屋上で出世地蔵を拝んで一息しましょう。
疲れた心を癒し、出世のために力を貸してくれるはずです。