狭い日本、とは言うけれど、雑煮の種類は極端な話、都道府県だけでなく家庭の数だけ存在していると言っても過言ではありません。
日本各地に共通する雑煮の最小限条件は汁と餅だけです。
これによく似ているのが各地に伝わる冬の料理、鍋ですね。
雑煮も鍋も、それこそ土着料理なので起源も由緒もありません。
餅を正月に食べるという行為こそ、歯固、つまり固い物を食べて歯を強化、長生きしましょうという意味合いがあります。
食材を雑多に煮るという料理は正月に限ったことではなく、武家社会が始まった鎌倉時代からは野戦食としても作られていました。
戦場近くの畑から野菜を徴用、保存が効く味噌や餅、うどんを入れてその場で全部の具を鍋に入れて食したわけですね。
この野戦食の名物が武田信玄のお膝元、甲斐の国(山梨県)の「ほうとう」です。
仙台の雑煮は伊達政宗が派手な正月料理を好んだ、とか、香川の白味噌仕立ては京から流された貴族が言い伝えた、とか、それぞれ雑煮には地元の環境や歴史が大きく関わっています。
自分が当たり前と思っている雑炊、もう一度、その成り立ちに思いを馳せれば郷土愛がさらに高まるでしょう。
ちなみに異なる地方出身者同士で結婚した際、雑煮を見れば、その家庭のパワーバランスが分かります。