言霊の実用例はスポーツの世界で顕著に表れています。
もっとも分かりやすいのは1960年代後半から1970年代前半までヘビー級ボクサーとして活躍したモハメド・アリことカシアス・クレイ。
1964年にヘビー級王座獲得後にイスラム運動組織に加盟していたことからモハメド・アリと改名しましたが、このボクサー、じつに口が達者な上、対戦相手を罵倒することで有名でした。
蝶のように舞い蜂のように刺すと自らのボクシングを美化、三度対戦した宿敵のジョー・フレイジャーには悪態の吐き放題。
「負けたら這いつくばってあいつのところまで行って『貴方は偉大だ、貴方こそ世界チャンピオンだ』と言ってやるよ」
とか、
「(フレイジャーをゴリラと見立て)対戦に備えて俺は毎日動物園に通っている」
とか。
言われた方は怒り心頭、怒髪天を突く、といったところでしょう。
実際、ジョー・フレイジャーはアリの暴言に深く傷ついていた、と後に語っています(最初の試合はフレイジャーが判定勝ちしましたが、アリは這いつくばりませんでした)。
これは大口を叩くことによって自分へのプレッシャーをかけているだけではありません。
罵倒し、相手を怒らせ、冷静さを欠かせて実力を存分に発揮させないという『できることは何をしてでも勝つ!』という言霊の表れなのです。
実際、アリの名言集には以下の言葉が記されています。
「肯定の繰り返しが信念につながる。その信念が深い確信になると、物事が実現し始める」