コミュニケーションのひとつの方法として言語は重要な役割を果たしています。
ただし、この言語の発生については各学問の研究者たちがそれぞれの視点から歴史を研究していますが、明確な発生点を見いだせないままのミッシングリングとなっています。
ミッシングリングに対する学問の興味深いところは物的証拠や論理的推移に基づきながらも、それぞれの学問的見地からさまざまな発想が生まれることです。
たとえば、言語哲学者であり言語学における第一人者のエイヴラム・ノーム・チョムスキー氏は、瞬間的に、ほぼ完全な形で、霊長類の一個体に突然変異が起こり、言語能力が備わったと主張しています。
チョムスキー氏は不連続性理論の提唱者でもあり、その理論は言語学でも認められているところですが、言語能力の発生については孤立しているようで、多くの学者は連続性理論、つまり認知や表現といった知能の発達の延長線上にある、という理論を採択しています。
一般的に考えれば連続性理論の方が納得するところですが、チョムスキー氏の不連続性理論には、それまで言語能力が脳のなかで要素が霧散状態にあり、飽和状態となったところで結晶化、跳躍進化したという説には、連続性理論にはない面白さがあります。
ともあれ、歴史的痕跡をまったく残していない言語は現在、当たり前のように使われていますが、発生が定かではないだけに古代では言葉が今よりも神秘的であり、霊的なものが宿っていたと考えられていました。