日本の伝統工芸が海外で注目されている実例を挙げましょう。
たとえばドン・ペリニヨンが日本の中川木工芸に発注した木桶のシャンパンクーラー。
フランスのモエ・エ・シャンドン社が誇る世界を代表するシャンパン・ブランドですが、その最高級品を適温に保つためのシャンパンクーラーに日本の木桶が選ばれ、ブランド名の刻印入りで300個が注文されました。
もちろん、ただの木桶ではありません。
箍(タガ)を嵌められるように下部は丸みを持たせながら上部にエッジをつけ、シャープな曲線を見せる側面のフォルムは実用性を兼ねた日本的美しさを備えています。
高野山に生息する高野槇(コウヤマキ)という日本(と韓国の一部)だけに生息する固有種を材料に使い、1個作るために200以上のカンナを使用、約5日間かけて作る逸材です。
丈夫で朽ちにくく、水にも強い性格を持っているので表面が結露しにくい、そして木材なので錆びないという利点からドン・ペリニヨン指定のシャンパンクーラーとなりました。
つまり中川木工芸からモエ・エ・シャンドン社へアプローチしたわけではなく、モエ・エ・シャンドン社が中川木工芸の商品に着目したわけです。
伝統工芸品でもモダンなデザインを取り入れることによって世界に通用する一級品になるという代表例といえるでしょう。