よく聞くこのセリフ、実は歌舞伎の中のセリフなのです。
三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)という演目の中に出てきます。
この話は和尚吉三とお嬢吉三、お坊吉三という三人の吉三と名乗る盗賊の物語です。
この中でお嬢吉三が夜鷹から百両もの小判を強奪したときのセリフで、冒頭部分から有名です。
『月も朧に白魚の篝(かがり)も霞む春の空
冷てえ風もほろ酔いに心持ちよくうかうかと
浮かれ烏のただ一羽ねぐらへ帰える川端で
竿の雫が濡れ手に泡思いがけなく手に入る百両
ほんに今宵は節分か西の海より川の中落ちた夜鷹は厄落とし
豆沢山に一文の銭と違って金包み
こいつぁ春から縁起が良いわい』
百両をせしめて浮かれている様子が伝わってきます。
そのセリフが有名になり、今に伝わります。
しかし、その華やかなセリフとは対照的に、この物語は明るい話ではありません。
人生の闇の部分や運命、因果応報などを説いているのです。
自分の計り知れないことを起因として今の人生が廻り、なかなか思い通りにならない人物が描かれています。
そういうどうにもならないことで人生はできているのだ、ということを言いたかったのかもしれません。
それはともかく、『こいつぁ春から縁起が良いわい』というセリフはいいですよね。
口に出してみたいと思わせます。
ちなみに、ここで言う春は、新春、正月のことです。
正月から縁起がいい、ということなのですね。
正月に何か縁起が良いことがあったら、ぜひ使ってみましょう。
⇒ 干支の性格