島国である日本は、漁業や航海など、海上の交通が昔から盛んでした。
台風や海流のために海が荒れることも多く、船の安全は昔から人々の願いの一つだったのです。
そのため、船の交通安全を祈願する寺社も各地にあります。
香川県にある金刀比羅宮。
『こんぴらさん』と呼ばれ、人々に親しまれています。
金刀比羅宮は海上交通の守り神として、船乗りたちの間で人気があります。
江戸時代には伊勢神社へのお伊勢参りに次ぐほどの人気で、東海道五十三次にも描かれるほどです。
船の交通が今よりも身近だったからでしょう。
その中には『こんぴら狗』と呼ばれる犬もいました。
当時は今よりも交通が発達していませんから、遠くから参拝するのは大変なことでした。
そのため、犬に初穂料などを持たせて、代理で行ってもらうことがありました。
『こんぴら参り』と書かれた風呂敷を首に巻き、旅人から旅人に連れられて金刀比羅宮を目指したのです。
『こんぴら狗』の姿は、授与されるお守りや置物などに見ることができます。
近代には海軍などもここに参拝に来るようになり、今でも海上自衛隊の殉職者の慰霊祭なども行われています。
金刀比羅宮に行くと、祀られている絵馬には造船会社などの名前も見られ、多くの人が海の安全を祈願しています。
ちなみに、金刀比羅宮は海の守り神ですが、像頭山の中腹にあります。
奥社まで上ると、その石段の数は1368段にものぼり、石段マラソンが開催されるほどです。
なかなかの数ですが奥社までたどり着くと、瀬戸内海を眼下に見下ろすことができます。
きっと、一望できる高いところから、こんぴらさんが私たちを見守ってくれているのでしょう。